ジンカン院生・研究員の研究概要

ジンカン文化人類学分野の院生と研究員の研究概要などについて紹介します。


博士後期課程

・康 陽球

研究テーマ:枯葉剤とともに生きる人々の人類学的研究
研究概要 本研究の目的は、ベトナム南部において、枯葉剤とともに生きるという経験がどのように組織化されているのかを明らかにすることである。ベトナムでは、旧米軍基地に貯蔵されていた枯葉剤を原因とする地域住民の健康被害が報告されている。当該地域では公的機関が、居住地の限定や生活習慣に関する指導・管理、出生前診断などを推進している。地域住民たちも独自の対処法を編み出し枯葉剤に向き合っている。同時に、枯葉剤被害者はアメリカの不正義を告発する象徴として、被害の認定と補償の過程はベトナム政府の正当性を強化するものとして政治的に利用されている側面もある。
 本研究では、専門的知識やテクノロジーの権力性を強調する立場や、公的な声明と地域住民の認識を対立物として前提し人々のリスク認識を文化に還元して理解する立場はとらず、専門的制度的言説がもつ政治性に留意しつつも、とりまく制度や実践のなかで目には見えない枯葉剤というものが人々にいかに経験されているのかを考察したい。とくに、妊産婦をめぐる実践や周産期医療に関心をもっている。[2014年5月更新]
研究業績 2013「在日コリアン男性と日本人女性の結婚―関西在住16人のライフストーリ―の分析から」(修士論文)

・佐野 文哉

研究テーマ:手話話者の言語と身体:フィジー共和国の障害児学校と聾学校を事例に
研究概要 音声言語とは異なることばである「手話」を用いる人びとについて研究を行なっている。現在の主なフィールドは、オセアニア・フィジー共和国の障害児学校および聾学校である。現地調査をとおして、フィジーにおける手話や手話話者(聴覚障害者(ろう者)、健聴者)の社会的位置づけを探ると同時に、現地の手話話者による手話を用いた相互行為を微視的に分析し、その特徴を明らかにする。その際、音声言語をモデルとして構築された従来の言語研究の型を絶対視するのではなく、そこからはみ出してしまう側面―とくに身体性や物質性、類像性―にも注目することで、人間のことばの特徴やその役割について再考する。[2015年5月更新]
研究業績 2015「第3章 創発されるコミュニケーション――手話サークルにおける対面コミュニケーションの分析から」佐藤知久ほか(編)『世界の手触り』ナカニシヤ出版pp.59-74.
2012『ろうあ者の差異・境界・コミュニケーションー手話サークルの参与観察からー』(修士論文)

・高垣 雅緒

研究テーマ:トランス・ジェンダーの医療人類学、タイと日本の比較研究
研究概要 現代に生きるトランス・ジェンダーのタイと日本における医療人類学的検討から、ジェンダー発現とセクシュアリティーおよび身体との関係性についてあきらかにすることをめざしている。更に性をめぐる人間の感情変調(ここではGender Dysphoria 性別違和感)に対し、医師である調査者が医学的介入を実践し「感情の医療」としての処方を模索してみたい。[2011年7月更新]
研究業績 M. Takagaki, T. Tomaru, JA, Maguire, NS, Hosmane: Future applications of Boron and Gadolinium neutron capture therapy. Boron Science: New Technologies and Applications. (ed. NS. Hosmane) CRC Press-Taylor and Francis Group, LLC, pp.233-264 (in press).
NS. Hosmane, JA. Maquire, Zhu Yinghuai, M. Takagaki.: Boron and Gadolinium Neutron Capture Therapy for Cancer Treatment. (ed. NS. Hosmane) World Scientific Publishing (in press).

・佃 麻美

研究テーマ:アンデス高地の南米ラクダ科牧畜における技術と人々の暮らしの変容
研究概要 本研究の目的は、今まさに変容を遂げているアンデス牧畜社会の実態に迫り、牧畜民がどのような生存戦略のもとに生きているかを明らかにすることである。
 荷駄用であるリャマは、従来、キャラバンを編成し、物々交換や収穫物の運搬によって農民から農作物を獲得することが重要視されてきた。しかし近年、道路網の発達などによってリャマをともなった旅が消えつつある一方、国際市場におけるアルパカの毛の需要が高まり、その品質改良がすでにさまざまな組織によって推進されている。
 このような中で、アルパカの品質改良に積極的に取り組み、経済的に成功している人びとと、かれらに雇われた貧しく土地を持たないアルパカ飼いがいることが明らかとなった。本研究では、両者の実践について調査を進めるとともに、新たに形成されている社会的ネットワークと、そこでの相互行為について明らかにする。[2011年6月更新]
研究業績 2014「中央アンデス高地ペルーにおけるアルパカの「遺伝的改良」と種畜の取引」『年報人類学』4号:34-59.
2012「接触領域としてのアルパカ品質改良」田中雅一(編)『コンタクト・ゾーン』 5,京都大学人文科学研究所 pp.90-107.

・中屋敷 千尋

研究テーマ:選挙と親族の交差領域に関する人類学的研究:北インド・チベット系社会を対象に
研究概要  近代民主主義的政治システムと伝統的な政治意識とがどのように接合し現実の政治をつくりあげているのか、とりわけそこで資源として活用されている「親族」が、従来の定義とは異なりいかに新たに意味づけられ構成されているのかを解明することを目指している。
 具体的には、北インド、チベット系民族の居住するスピティ渓谷を対象に、比較的最近導入された選挙制度の影響を受けて土着の親族関係がいかに変質しているか、また逆にその変容した親族が選挙に影響を与えているのかを研究している。
 現在は親族のほうに焦点をあて、スピティ渓谷の親族関係の中でも日常生活を支える互助的な親族関係ニリン(nirin)がどのような関係なのか、状況に応じてどのように立ち現れ方が異なるのかを長期調査のデータの分析を通じて明らかにしようと試みている。
 政治、親族のほか、階層制度、宗教にも興味があり、今後少しずつ扱う領域を広げる予定である。[2015年4月更新]
研究業績 2014「北インド・チベット系社会における選挙と親族: スピティ渓谷における親族関係ニリンの事例から」文化人類学、79(3): 241-263.
2011『北インド・チベット系社会における選挙の人類学的研究』(修士論文)

・森下 翔

研究テーマ:科学技術の人類学
研究概要 地球物理学の一分野である「測地学」の実践を対象とし、日本とインドネシアの研究室でフィールドワークを行っている。科学実践論やアクター・ネットワーク理論を参照しつつ、西欧近代において「特権化された『知』の営み」として一面的に理解されてきた「科学」の営みを、人とモノとが紡ぐ関係の在り方という視点から理解しなおすことを通じて、科学をより豊かな観点から語る眼差しを模索している。[2014年7月更新]
研究業績 2015「第9章 神霊の<秘匿-獣化>とプレートの<召喚>」佐藤知久ほか(編)『世界の手触り』ナカニシヤ出版pp.165-177.
2014「不可視の世界を畳み込むー個体地球物理学の実践における「観測」と「モデリング」」文化人類学78-4: 449-469.
森下さんの個人ウェブサイトはこちら

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博士課程前期課程



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研究員

【学術振興会特別研究員PD/RPD(受け入れ)/研究員】

・梅村 絢美

研究テーマ:スリランカ伝承医療の「語らない」診療から考える言葉と経験のパラドクス:言語表象と出来事の単独性・代替不可能性をめぐって
研究概要 病いとは、そしてその治療の経験とは、当人にとって「他でもないこの自分が、他でもないこの時この場所この状況で」経験する、誰にも何にも置き替えようがない単独的で代替不可能な一回きりの経験である。こうした経験を言語化することは、いったい何を引きおこすのだろうか。言語がある種の共同性を前提にしている以上、出来事を言葉によって表象することには、その出来事の単独性・代替不可能性を一般性のなかの特殊性に位置づけ、反復可能なものへと変換させることだといえる。これまで調査研究を続けてきたスリランカの伝承医療においては、診療・製薬・継承等において、言語表象に対する明確な忌避が存在する。こうした「沈黙の医療」から言葉と経験のパラドクスを探求することを通じて、「病いの語り」と医療診断(身体の数値化・言語化)がせめぎあう臨床医療をとらえていきたい。[2014年5月更新]
研究業績 2012「土着医療のAyurveda化:スリランカにおける土着の医療実践の位置づけをめぐって」『南アジア研究』日本南アジア学会、第24号、pp.132-142.
2011「発話がまねく禍、沈黙がもたらす効力:スリランカ土着の伝統医療パーランパリカ・ヴェダカマの知の継承と医療実践」『社会人類学年報』東京都立大学社会人類学会、第37号、pp.165-182.[2014年5月更新]

【学術振興会特別研究員PD(転出)/研究員】

・武田 龍樹

研究テーマ:カンボジア村落部における政治的暴力の記憶
研究概要 カンボジアでは、1970年から1990年代後半まで、民主カンプチア時代の全体主義や内戦といった政治的暴力が政治的暴力が長く続いた。本研究は、現代カンボジア村落部において、人々の生活世界の中で見られる過去の政治的暴力についての語りをミクロに分析するとともに、仏教実践や日常的実践を通じて個々人の記憶がどのように組織化されているのかを考察する。[2014年5月更新]
研究業績 2010 「現代カンボジアにおける仏教篤信家たち―ポルポト時代以後の東部村落部を事例に」『宗教と社会』「宗教と社会」学会、第16号:65-88.

・中谷 和人

研究テーマ:芸術と生の人類学
研究概要 心身障害のある人たちの芸術活動をテーマに日本とデンマークで調査。現象学、生態学的心理学、システム論等々の知見も取り入れながら、芸術を「再現=表象」の問題としてではなく「生きていること」の問題として根底から捉えなおすことをめざす。同時に、監査文化に代表される生政治的な文脈のなかで、芸術活動が切り開く新たな現実の可能性を考察する。[2013年4月更新]
研究業績 2013「芸術のエコロジーへむけてーデンマークの障害者美術学校における絵画制作活動を事例に」『文化人類学』77(4), 544-565頁. 2009「『アール・ブリュット/アウトサイダー・アート』をこえて―現代日本における障害のある人びとの芸術活動から」『文化人類学』74(2),215-237.

・萩原 卓也

研究テーマ:自転車競技(ロードレース)の文化人類学的研究―苦痛の経験の慣習化から考えるジェンダー規範
研究概要 スポーツには、能動性、暴力性、競争的排他性などによって表わされる「男らしさ」のジェンダー規範が内在している。例えば、スポーツにおける苦痛の経験は、それに耐えられない者を排除し克服を迫る点で、ジェンダー規範と親和性がある。しかし一方で、苦痛の受動的、協調的、受苦的な側面は、ジェンダー規範を解体する可能性を潜在させている。本研究では、ロードレースという、アシストがエースの勝利のために犠牲になる、また戦局によっては敵チームとも協力する特殊な側面をもつスポーツを取り上げる。両義的な側面をもつ苦痛の経験が、どのように選手に慣習化されていくのか。その過程に着目することで、その中に既存のジェンダー規範を解体する可能性を探ることが目的である。[2011年7月更新]
研究業績 2010『女子プロレスのスポーツ人類学的研究:レスラーの痛みの経験とジェンダー』(修士論文)

・山内 熱人

研究テーマ:メキシコ、先住民農村における移民の増加、生活、祝祭の変化と維持
研究概要 1980年代の経済危機、1994年の北米自由貿易協定(NAFTA)への参加を経験し、メキシコはここ30年の間に社会経済的に大きな変化を遂げてきた。私の研究するメキシコ南東部のオアハカ州のサポテコ系先住民農村においても、農牧畜を生業とした自給自足的なライフスタイルは変化した。私の研究は、そのサポテコ系先住民農村において、このような近代化過程の中で、移民が増加することによって、伝統的なライフスタイルや儀礼、人々の考え方や習慣がどのように変化、あるいは維持されているのかを明らかにして、非西洋社会における近代化の現状、可能性を探ることにある。[2011年7月更新]
研究業績 2006『帰郷移民を生み出し、支える村の人間関係:メキシコ、オアハカ州のサポテコ人村落の事例から』(修士論文)

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